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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)1733号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人遠山丙市同矢吹忠三の上告趣意第一点について。

原審において本件につき証拠調手続を了し裁判長が被告人に対して利益となるべき証拠を提出することを得べき旨を告げたところ、被告人はない旨を答え、弁護人から示談書一通及び歎願書五通を提出したこと並びに裁判長が右書類を部員と共に檢閲し立会檢事に示して本件記録に編綴すると告げたことは原審公判調書の記載により明かである。ところで右歎願書の如きものはその書類の性質上証拠書類とは云えないものであるから参考書類として提出されたものとみるのが相当であるのみならず仮りに所論の書類が証拠書類として提出されたものとしても公判廷において被告人の利益のために弁護人が提出し裁判所及び檢察官の閲覽を経たものについては必ずしも旧刑訴第三四〇條の規定による手続をする必要はないのである。それゆえ論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって刑訴施行法第二條、旧刑訴第四四六條により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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